
【放送日】
2016/02/26
【TV局】
TBS系
【番組】
ゴロウ・デラックス
【カテゴリ】
バラエティー
【発言者】
I 稲垣吾郎(42)、T 外山惠理(TBSアナウンサー、40)、T 滝口悠生(33)、M 本谷有希子(36)、A青山文平(67)
【発言内容】
(放送開始から22分後)
直木賞受賞作『つまをめとらば』
天下太平の江戸時代後期、人生に惑う武家の男と身一つで生きる女のしたたかさを描いた。
選考委員の林真理子(61)さんは『文章は格調高く粋、そして女達の魅力的なことといったらどうだろう』と、評した。
朗読部分はこちら。
ある武家屋敷の当主、省吾のもとで働いていた佐世という下女が、あるとき屋敷内の男と恋仲になり心中を図ったが佐世だけが生き残り、屋敷を後にする。
その後佐世が省吾の幼馴染、貞次郎と恋仲になった噂が流れた。
それから時が経ったある日、省吾の屋敷に幼馴染の貞次郎が同居する事に。
その時貞次郎はある町の女と一緒になるか悩みながらも、男2人で気楽に暮らしていた。
そんな時中年になった佐世が屋敷に味噌を売りに訪ねてきた。
2人が佐世から味噌を買ったあとの幼馴染同士の会話シーンを、吾郎さんが朗読。
稲垣(朗読)
「『でも、ひと樽、買ったのだろう』
『お前も買ってくれた、と言われた。買わんわけにはいかんだろう』
『そういう話だったのか』
『そういう話とは?』
『つまり、味噌の売り込みの話だ』
『ああ、そうだ。あらかたは味噌の話だった』
貞次郎は力なく、続けた。
『この界隈で他に買っていただけそうな処の心当たりはございませんでしょうか、と聞かれた』
『そうか』
『たいしたものだな』
空を見上げて、貞次郎は言った。
『ああ、たいしたものだ』
『どうやっても、かなわんな』
『ああ、かなわん』
『省吾』
意を決したように、貞次郎は名を呼んだ。
『ああ』
『俺はここを出ていくことにしたよ』
『そうか』
その日は梅雨の晴れ間で、空が抜けるように青かった。
『やはり、あの煮売屋の女と一緒に暮らすことにした』
『踏ん切り、ついたか』
『ああ、佐世と会って踏ん切りがついた。張り合っても歯が立たん。俺は女に頼ることにする。やはり、女に死に水をとってもらう』
(朗読終了)
いいですね、この会話がね」
外山「そうですね」
稲垣「時代がこんな離れてても、今のぼくらとなんか感覚が・・・」
青山「今と同じにするためにこの時代を選んでるもんですから、時代小説ってやっぱり戦国、幕末がメインですけど、やっぱりそこにはいかないんですよね、ええ。
僕が書いてる時代ってのは18世紀の後半から19世紀前半ですから、この時代っていうのは今の時代とそっくりなんです。
キーワードがないっていうのと、皆その・・・正解がなくてもがいているっていう時代で」
稲垣「だから何かスーっと入れましたよね」
外山「そうかそういうことなんですね」
稲垣「うん・・・何か男としても・・・なんか分かるなぁっていうかね」
滝口「こういう市井の普通の人たちっていうのは、なんか資料は探そうと思えば結構見られるものなんですか?」
青山「あのですね・・・一番いいのは日記ですね」
外山「ホントに普通の人の日記が残ってるんですか?」
青山「そうです、ホントにこういう風に生きてたんだ、というのがよく一番、歴史書なんかよりそれが一番よく分かる。
何がね、生き生きとするかというと、例えばですね・・・文化(年間)っていうのはバブルなわけですよ。
んで、その後の天保(年間)っていうのは本当に幕府がこう(下って)なって、要するにみんな今みたいな時代ですよ。
あんまりお金も使えない。そうするとね・・・天保に生きてる日記に出てた女の人がね『文化の人はいいわよね、贅沢を知ってる』っていう。
そういうのを読むとね、何も変わらないのがよく分かる。今とほとんど同じでしょ。」
稲垣「バブルと平成と、文化と天保・・・」
外山「面白い。・・・本谷さん」
(本谷)「はい。いや、やっぱり生きていくと、どうしても図太くなってってしまうんですよね。図々しくなるし。女性として強くなっていくっていうのも、これどうしようもないなと、思ってて。でもここで、青山さんがその女性に一抹の寂しさを覚えて、ガッリしたって感じで書かない。
俺はやっぱりこの女に頼って生きていくんだという風に、なんかこう・・・女性のことを淡い気持ちのままで取っておきたかったってところを、乗り越えて書いて下さるので、それは何か嬉しいなと思いますね」
青山「そのまさに、違うからこそ生きているわけだから、良い悪いじゃないですよ。そのあたりを汲んで頂けると本当に嬉しい」
稲垣「なるほど。すごいフェミニストだし、青山さんもこの本もね。女性の方が読むとまた違った感じなのかな」
(放送開始から28分後まで)